なぜ「最初の1〜2時間」が一番迷うのか
大きな地震が起きたとき、専門家によって言っていることがバラバラです。
「机の下に隠れろ」
「机の下は危険、デルタゾーン(三角形の空間)を探せ」
「すぐに建物の外に出ろ」
どれも間違いではありませんが、実は建物の構造や自分がいる場所によって、優先することが違い、情報だけを見ると矛盾しているように感じてしまいます。
このページでは、オフィスワーカーが発災の瞬間からおおむね2時間の間に「何を」「どの順番で」「どう」判断すればよいかを、建物の年代別・状況別
に整理します。
STEP1:揺れている最中(0〜数十秒)にすること
まず大原則として、強い揺れの最中に動き回るのは危険です。
移動中に転倒したり、倒れてくる什器に巻き込まれたりするリスクの方が高いため、その場で姿勢を低くして頭と首を守ります。
ゴブリンのポーズ (幻冬舎plus から引用)
ただし「その場でどう身を守るか」は、建物の耐震性によって推奨される行動が変わります。
① 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物(旧耐震基準)
この基準は震度5程度の中規模地震にしか対応しておらず、震度6強以上の大地震では倒壊・崩壊のおそれがあるとされています。
屋根や天井ごと崩れる・下敷きになる可能性があるため、机の下に潜り込むことにこだわらない
建物中央の柱の近くなど、梁や壁に囲まれた「三角形の空間(デルタゾーン)」を探し、姿勢を低くする
頭を守りながら揺れが収まるのを待つ。無理な行動はやめ、屋外へ早期に移動する準備(窓ガラスや外壁の落下物などに注意)
② 1981年6月〜2000年(平成12年)以前の建物(新耐震基準・旧世代)
新耐震基準は震度6強〜7程度でも「倒壊・崩壊はしない」ことを目標にしていますが、内装や什器の固定までは想定していません。
建物自体の倒壊リスクは旧耐震より下がるが、天井材の落下、什器の転倒・移動は起こり得る
机の脚をしっかり掴める場合は机の下、掴まれず机が動いてしまう環境なら、柱際・壁際のデルタゾーンへ
ガラス面や什器から離れることを優先する
③ 2000年以降の建物(現行耐震基準)
2000年基準では地盤調査や壁量・接合部の規定が明確化され、木造住宅を中心にさらに耐震性が引き上げられています。
オフィスビルの多くもこの水準以降に建て替え・新築されています。
建物本体の倒壊リスクは低いため、基本は「机の下に入り脚をしっかり持つ」でも問題ない
ただし棚やロッカー、コピー機など固定されていない什器の転倒・移動は別リスクとして常にある
什器から離れた場所(通路の中央、柱際など)にいる場合は無理に机まで移動せず、その場でしゃがんで頭を守る
ポイント:自分のオフィスが「何年に建てられたか」を事前に総務・施設担当に確認しておくと、STEP1の行動が事前に決まります。
分からない場合は、②の対応(机の脚を持てるなら机の下、無理なら柱際)を基本にするのが無難です。
STEP2:揺れが収まった直後(〜数分)にすること
自分と周囲の安全確認:ケガの有無、出血、動けない人がいないか
火の始末・初期消火:給湯室や喫煙室など火気のある場所を確認。初期消火は「天井に火が届く前」まで
避難経路の確認:ドアや通路がふさがれていないか。※エレベーターは絶対に使わない
その場に留まるか、避難するかの判断:
建物に大きな損傷(壁の亀裂、傾き、異臭)がなければ、むやみに外へ飛び出さない
屋外は看板・窓ガラス・外壁の落下物のリスクが揺れ直後は最も高い時間帯
STEP3:数分〜30分の間にすること
安否確認:フロア内・部署内の人数点呼、負傷者の救護・搬送
情報収集:テレビ・ラジオ・自治体の防災アプリなどで震源・震度・津波情報を確認 ※SNSの未確認情報は鵜呑みにしない
建物の安全性の再確認:施設管理者・ビルオーナーによる建物点検の実施状況を確認
社内の指揮系統の立ち上げ:災害対策本部・安否確認担当・備蓄担当など役割分担が事前に決まっていればここで発動
STEP4:30分〜2時間の間にすること
ここからは「その場に留まるか、動くか」の判断がテーマになります。
一斉帰宅抑制の原則を思い出す:内閣府・東京都のガイドラインでは、大規模地震発生時、救助・救命活動を優先するため発災から概ね3日間は施設内に留まることが基本方針とされています。慌てて全員で一斉に帰宅させないことが、道路の混雑や二次被害の防止につながります。
备蓄の確認:水・食料・簡易トイレなど、3日分の備蓄がどこにあるか、担当者だけでなく全員が分かる状態にしておく
家族との安否確認手段の共有:災害用伝言ダイヤル(171)やSNSの安否確認機能など、事前に決めた手段を社内に周知
やむを得ず帰宅する人への対応:小さな子どものお迎えなど、どうしても移動が必要な人には、徒歩帰宅ルートや危険箇所の情報を共有する
まとめ:判断に迷ったときの優先順位
揺れている間は「動かない・頭を守る」が最優先(建物の年代で「机の下」か「デルタゾーン」かが変わる)
揺れが収まったら「安全確認 → 初期消火 → 避難経路確認」の順
その場に留まれるなら留まる。むやみに外へ飛び出さない、むやみに帰宅しない
3日間は職場に留まる前提で、備蓄と役割分担を事前に決めておく
「どの行動が正解か」はSNSやYouTubeでも意見が分かれますが、自分のオフィスの築年数・耐震基準を知っておくことが、迷ったときの判断材料になります。まずは総務担当や施設管理者に「このビルはいつの耐震基準か」を確認するところから始めてみてください。